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AIが進化しても大丈夫!子どもが身につけておきたい力とは?

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AIが進化しても大丈夫!子どもが身につけておきたい力とは?

「AIが進化して、人間の仕事が奪われる」と聞いたことがありますか?

この2、3年でスーパーやコンビニのレジが自動化されているのを目の当たりにした私たちは、AIがどんどん進化して社会に浸透していく真っ只中にいるといえます。

今小学生の子どもたちが働くであろう約10~20年後、子どもたちがAIに奪われない仕事をするにはどんな力が必要なのでしょうか?

ここでは、必要といわれている力と家庭でできることを紹介します。

もくじ

    AIとは

    まず、「AI」という言葉の意味を確認しておきましょう。
    AIとはartificial intelligenceの略。「人工知能」と訳されます。
    しかし、「人工知能」という言葉からイメージされる「知能を持ったコンピューター」には誤解があるようです。
    「人工知能」なら、人間と同じぐらいの能力のある知能だと思われがちですが、コンピューターが行っているのは基本的には「四則演算」です。
    「人工知能」の目標は「人間の知能的活動を四則演算で表現するか、表現できていると人間が感じる程度に近づけること」だそうです。
    (出典:新井紀子、「AI vs.教科書が読めない子どもたち」、東洋経済新報社、2018 年2月、12ページより抜粋)
    しかし、人間の全ての知的行動を四則演算で表現できる、とは考えにくいですね。
    つまり、AIを「人工知能」という意味で使いがちですが、本当の意味は異なります。
    一般に「AI」は「AI技術」のこと。「AI技術」とは「AIを実現するために開発されている様々な技術のこと」です。
    この記事では「AI技術」のことを「AI」と表記します。
    2000年代になって、AIを飛躍的に発展させたのが「機械学習」と「深層学習」です。

    機械学習と深層学習

    機械学習と深層学習

    出典:NTTコミュニケーションズ 意外と知らないトレンド用語「深層学習」より


    2000年代になって、AIを飛躍的に進化させたのが「機械学習」と「深層学習」です。

    「機械学習」は「マシーン・ラーニング」のこと。機械(コンピューター)が事前で人間が用意した計算方法(アルゴリズム)に基づき、ビッグデータと呼ばれる大量のデータを何度も学習することで、ルールやパターンを見つけ、精度の高い予測や判断ができるようになるというものです。

    「深層学習」は「機械学習」の1つで「ディープ・ラーニング」のこと。
    人間の神経細胞の仕組みを模した「ニューラルネットワーク」を用います。現在では、画像認識、音声認識、翻訳など多くの分野で成果を出しています。


    従来の機械学習ではAIがパターンやルールを発見する際に「何に着目するか」は人間が設定していましたが、深層学習ではそのパターンやルールをAI自ら導き出せるそうです。

    これらの機械学習・深層学習によって、「人工知能」のイメージに近づいてきましたね。今後も新たな学習方法などが開発され、AIはどんどん進化していくでしょう。
    その中で、私たち人間はどんな仕事をすることになるのでしょうか。

    AIが得意なこと

    AIが得意なことからみてみましょう。

    • 速く正確に処理すること
    • 数値化されていることに関する推論
    • 画像、音声、映像の解析
    • データの記憶
    • 休みなしで働き続けること
    • 過去の事例から未来を予測すること


    つまり、これらの得意なことを行かせる仕事がAIに取って代わられる可能性がある仕事です。
    具体的にはどんな仕事があるでしょうか。

    AIに取って代わられる仕事

    2015年にオックスフォード大学と株式会社野村総合研究所が共同研究により「国内601種の職業について、それぞれ人工知能やロボット等で代替される確率を試算しました。
    その結果10~20年後に日本労働人口の約49%が就いている職業において、それらに代替することが可能だとの推計結果が発表されました。

    例えば、IC生産オペレーター、一般事務員、鋳物工、医療事務員、受付係、AV・通信機器組立・修理工、会計監査係員、貸付係事務員、学校事務員、カメラ組立工、CADオペレーター、教育・研修事務員、行政事務員など。
    出典:日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に

    AIが得意なことから考えると、納得できる職種ですね。

    では、AIに取って代わられない仕事は何があるのでしょうか。

    AIが苦手なこと

    AIに取って代わられない仕事についてのヒントがAIが苦手なことにあります。
    AIが苦手なことは

    • データが少ない中での推論
    • 学習していない事の判断、実行
    • 文脈の理解
    • 共感
    • クリエイティブなこと
    • 0から何かを生み出すこと
    • ひらめきや直感
    • 善悪の判断
    • 意思決定や判断
    • 目的を示すこと
    • 入力デバイスの性能を越える作業
    • 人の気持ちを汲み取ること


    などが挙げられます。

    AIに取って代わられない仕事

    AIが苦手なことは「人間らしいこと」ともいえそうですね。その人間らしさを活かし、今後もAIに取って代わられないだろうといわれている仕事がこちらです。

    アートディレクター、アウトドアインストラクター、アナウンサー、インテリアコーディネーター、エコノミスト、音楽教室講師、学芸員、学校カウンセラー、観光バスガイド、クラシック演奏家、ケアマネージャー、コピーライター、作業療法士、外科医、作詞家、作曲家、小学校教員、小児科医、スタイリスト、中学校教員、精神科医、スポーツインストラクター、など。
    出典:日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に

    これらの仕事の共通点は何でしょうか。
    それは、人間を対象とした仕事であることです。
    人間を相手にする仕事では、データをもとに判断すればいいのではなく、相手の気持ちに寄り添ったり、共感したり、励ましたり、希望をくみ取ったり、と心や感情も関係してきます。
    AIには難しい分野ですね。

    10年後には労働力率は人口の約半分に⁉

    もしかすると、AIの発展によってこんなにたくさんの仕事が取って代わられることにネガティブな印象を抱くかもしれません。
    しかし、AIの発展は必要不可欠なことなのです。
    こちらは日本の高齢化率の推移と見通しです。

    人口と高齢化率の推移と見通し

    出典:みずほ総合研究所 少子高齢化で労働力人口は4割減


    徐々に65歳以上の人口が増え、高齢化率が上がってきているのが分かります。

    また、下記は労働力人口と労働力率の見通しです。

    労働力人口と労働力率の見通し

    出典:みずほ総合研究所 少子高齢化で労働力人口は4割減


    10年後には、労働力率は人口に対して約半分になってしまうことが分かります。

    このような状況の中、今まで通り、人間の力だけで社会を支えていくのは困難だと予想されます。
    AIを上手に使って生きていくことが必要不可欠なのです。

    これから子どもたちに必要になる3つの力

    では、これから必要とされる力をみてみましょう。
    『10 年後、君に仕事はあるのか?』によると、これから必要な力は下記の「生きるチカラの三角形」で表現されています。

    必要になる3つの力

    参考:藤原和博、「10年後、君に仕事はあるのか?」、ダイヤモンド社、2017 年2月、39・80ページ「生きるチカラの三角形」より編集部が作成


    こちらの図のように、「情報処理力」(学力)だけではなく、「情報編集力」(コミュニケーション力など)だけでもなく、「基礎的人間力」も合わせた全ての力が必要です。
    詳しく解説していきます。

    基礎的人間力

    土台となる力。家庭での教育が基礎になりますが、学校生活やクラブ活動での体験、人間関係、旅などで育まれます。
    体験を通じて忍耐力や精神力、集中力、持久力なども強化されるでしょう。

    情報処理力

    情報処理力とは、いわゆる「学力」と言えます。
    学力がないと何かを理解することが難しくなります。インターネット上で検索するにも、どんな言葉を使うのか、たくさんの情報の中から何を選ぶべきなのかなど、知っている方が理解力は上がりますね。
    情報を自分のものとして吸収したり、人に伝えようとするときに、情報を正確に処理するためや情報をインプットするためにも必要な力です。
    また、大前提として、書いてあることを理解する「読解力」があることも大切です。
    学びは学校に通っている間だけではありません。社会に出てからも学ぶことはたくさんあり、その際に必要となるのが読解力なのです。

    読解力についてはこちらの記事をご覧ください。
    子どもの読解力は落ちている?読解力が及ぼす影響とは

    情報編集力

    情報編集力は、正解がないか、正解が1つではない問題を解決する力です。
    必ず正解がある学校での勉強と違って、社会に出ると正解がない問題の方が多いですね。
    文部科学省では「思考力・判断力・表現力」と表現することもあり、経済産業省では「社会人基礎力」、経済界では「問題解決能力」などと言ったりもします。
    また、上記の図にあるように。「情報編集力」には「5つのリテラシー」が必要であるといわれています。
    5つのリテラシーは下記です。

    1. コミュニケーション・リテラシー:異なる考えを持つ他者と交流しながら自分を成長させること
    2. ロジカルシンキング:・リテラシー:常識や前例を疑いながら柔らかく「複眼思考」すること
    3. シミュレーション・リテラシー:頭の中でモデルを描き、試行錯誤しながら類推すること
    4. ロールプレイ・リテラシー:他社の立場になり、その考えや想いを想像すること
    5. プレゼンテーション・リテラシー:相手とアイディアを共有するために表現すること

    これらのリテラシーを使ってアウトプットする、つまり人に伝えたり、文章などに表現したりすることになります。

    「基礎的人間力」「情報処理力」「情報編集力」はそれぞれ相互に影響し合うため、バランスよく育むことが大切です。

    出典元:藤原和博、「10年後、君に仕事はあるのか?」、ダイヤモンド社、2017 年2月

    AIに負けない力を付けるために家庭でできること

    「情報編集力」で述べた5つのリテラシー。それらを高めるのに適しているのが「遊び」です。
    それも、「正解が1つではない」遊び、または「答えがない」遊びです。
    例えば、ジグソーパズルは完成形が決まっていますが、レゴなどのブロックでは自由に作ることができます。
    友だちと一緒に遊ぶことで、衝突することもありますが、どうすればお互いに気分よく遊べるか、など、体験を通じて5つのリテラシーを高めることもできます。
    習い事として、STEAM教育を取り入れたり、プログラミングを学んだりするのもいいですね。

    STEAM教育に関する記事はこちら
    【家庭で簡単にできる!】親子で学ぶ小学生のSTEM(ステム)教育

    コーチングを取り入れたプログラミングの体験はこちらから
    【オンライン開催】子どもの"やってみたい”からはじめる!小学生のプログラミング無料体験!

    AIの発達により、仕事は変わっても、人間らしく生きる社会へ

    ノートパソコンの画面を見る男の子

    AIの発達により、確かに人間がする必要がなくなる仕事も出てくるでしょう。しかし、それをネガティブに捉えることなく、AIと共存していくことが大切です。
    AIが人間の仕事をするようになったとしても、かつて産業革命の時にホワイトカラーの仕事が生まれたように、新たに生まれる仕事もあります。
    日常生活にAIが入り込み、町の電気屋さんならぬ、町のAI修理屋さんという仕事ができるかもしれません。プログラマーは今以上に求められるでしょうし、AI技術の開発するための仕事も増えるでしょう。
    ただ、AIができる仕事が増え、AIにはできない新しい仕事ができるまでにタイムラグがある可能性はあります。すると、一時的に「仕事を奪われた」人たちが社会に多くいることになるかもしれません。なぜなら、AIができるような仕事をしていた人たちが急にAIではできない仕事ができるようになるわけではないからです。そこには教育も必要になってくるでしょう。
    しかし、今から将来を見据え、「基礎的人間力」「情報処理力」「情報編集力」を磨いていくことはできます。「遊び」の中で多くの体験をし、様々な力を育んでいくことは、子どもが自分らしく生きていく助けになることでしょう。
    AIの発展が人間の仕事を奪うと悲観的になるのではなく、AIがやってくれるから、より人間らしい仕事、より自分が幸せになれるような仕事ができる、と捉えて進んで行けるといいですね。

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